phone rang 062
pr_062
僕はその霧の中にいて、丘の頂を仰ぎ見れる位置で、突っ立ったままでいる。そして僕が立っているところから十数メートル先のところに人影があり、霧が流れ、その姿が認められるようになって、その人影がKなのだとわかる。もちろん僕はKに会ったことはないので、それがKなのだという根拠はないのだが、僕は長い間、不在だった古い友人を、他の人間と区別出来るのと同じように、目の前にいるのがKだと確信していた。そう、そのKが新宿で盗まれた僕のペンタックスを構えて立っているのだった。 次へ
inserted by FC2 system