phone rang 005
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郵便受けの並んでいるマンション入口には、小さな管理人室がある。今日は窓口に丈の短いカーテンがかかっており、どうやら管理人は休みのようだった。普段はカーテンが開いており、小さな花瓶に一輪差しの花が活けてあったりするのだが、不思議と管理人を見かけることは少なかった。最後に管理人を見たのはいつだったろうか。雨の日に作業着を着て、手には箒を持ち、自転車置き場へと向かって歩いてゆくうしろ姿を僕は思い出す。そう、さっき猫が去っていったようにして、通路を歩いているのを見たのが最後だ。もう数週間前のことだ。それ以来、僕は管理人を見かけていなかった。 次へ
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