phone rang 004
pr_004
白毛に黒ブチの猫で、小さな鈴のついた首輪をしているので、飼われている猫だろうとは思うが、名前はわからない。近づいてみると、特別こちらを警戒する風でもなく、常の声でにゃあと鳴くと、すくっと立ち上がった。今度は首についた鈴が小さく鳴った。そしてくるりと背を向けた。猫は目の前の人間に興味を失ってしまったか、または僕を見ていたことを忘れてしまったようだった。しなやかな動きで壁沿いを歩き出すと、ゆっくり脚を送り出しながら、振り返ることもなく、雑然とした自転車置き場へと消えていった。 次へ
inserted by FC2 system