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furin pudding (3)


「今何してるの」というメッセージがiPhoneの画面に表示される。僕はドキっとして、思わずiPhoneをマッキントッシュの内ポケットにしまう。あかりはベッドで眠っている。下着をつけているかどうかは分からない。僕はコンビニで貰ったプラスチック製のスプーンを、卵色の滑らか表面に突き立てる。この瞬間を何度味わっただろう。スプーンはやすやすと柔らかい部分に受け入れられ、わずかな抵抗を持ったひとすくいを、口に運ぶ。例の甘過ぎる記憶が蘇り、頭の中にある感覚を司る神経群に刺激を与え、次の瞬間にはその刺激が体全体にゆきわたる。次々と柔らかな山を切り崩してゆく。深いひと突きによってダークブラウンの液体が吹き出し、えぐって出来た柔らかい谷間にたまってゆく。ここまでくれば、後は好きなようにかき混ぜればいい。沈鬱とした東京の空は、ついに雨模様となった。不穏な風が吹いていて、部屋にはサッシから空気が漏れる笛のような音がしているが、僕はその音に気付かない。



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